小学校入学前の大きな節目である「就学相談」。
発達障害やグレーゾーンのお子さんを持つ保護者にとって「支援級と普通級のどちらがいいのか?」という悩みと不安がつきまとう場面です。
実際に就学相談に行った後に

想定と違う結果でショックで落ち込んだ…



就学相談に行かなきゃよかった!
と感じる保護者も少なくありません。
なぜそのようなすれ違いが起きるのでしょうか?
この記事では、就学相談で揉めやすい2つのパターンと、判定結果が希望と異なった場合の対処法について解説します。
- 就学相談でショックを受ける、揉めやすい2パターンを紹介
- 保護者の希望と違う判定結果が出た時の対処法
- 就学相談の判定基準について
就学相談行かなきゃ良かった?ショックで揉めるのは2パターン
就学相談では、支援級か普通級かはっきり判定が出るため、その結果に対して強い感情が動くのは自然なことです。
特に、保護者の希望と結果が異なった場合は「どうして?」「うちの子が支援級なの?」と戸惑いが生じます。
その中でも、揉めやすいのは次の2つのケースです。
- 普通級を希望していたけれど支援級判定だった
- 支援級を希望していたけれど普通級判定だった
①普通級を希望していたけれど支援級判定だった



うちの子も頑張れば普通級でやっていけるはず!



できれば普通級で学ばせたい!
保護者が普通級を希望していた場合、支援級を勧められるとやはりショックですよね。
特に「支援級=できない子」というイメージを持っている方もまだまだ多く、自分の子供を否定されたように感じてしまうことがあります。
しかし、支援級判定は子どもの能力の優劣を意味するものではなく、「学びやすい環境を選ぶための判断」です。
支援級は普通級に比べて少人数で構成され、担任や支援員による個別のサポートを受けられる体制が整っています。
授業の進度や内容も子どもの理解度に応じて調整できるため、焦らず学習を積み重ねやすいという特徴があります。
また、集団行動や一斉授業が負担になりやすい子どもにとっては、焦りやストレスを減らし、自己肯定感を育てやすい環境でもあります。
普通級では30人前後の集団で一律の授業が行われます。
注意の切り替えが苦手だったり、言葉の理解に時間がかかる子がいても、担任の先生が一人ひとりに十分な時間を割くことは難しいのが現状です。
「支援級判定」は子どもの現時点でのストレスを軽減し、学びやすい環境を確保するための判断とも言えます。



「支援級=特別」ではなく、「その子に合った学び方の一形態」だよ。
支援級を勧められて普通級に行ったらどうなるか気になる方はこちらもどうぞ


②支援級を希望していたけれど普通級判定だった
逆に、保護者が「支援級で安心して学ばせたい」と考えていたのに、普通級を勧められるケースもあります。



困りごとが多いのに、普通級で大丈夫なの…?
このような結果に戸惑う保護者は多く、「家庭では困りごとが多いのに、なぜ普通級なのか」と疑問を抱くことも少なくありません。
就学相談で教育委員会は、「本人の学力・適応力」を重視して判定を出すため、実際の家庭での様子や疲れやすさが反映されにくいこともあります。
そのため、家庭でサポートが必要な子でも面談や発達検査(WISCなど)の場面で一定の集中力や理解力が見られた場合に「普通級でも対応可能」と判断されるケースがあります。



総合的に見て支援の必要性が軽度であれば普通級で対応できると判断されるみたい。
ただし、実際の学校生活は検査室や面談の場とは異なり、刺激が多くストレスもかかる環境です。
そのため、発達検査では見えにくい困りごとが多い子の場合、面談の際に具体的なエピソードを補足することをおすすめします。
たとえば、



うちの子は、音や人混みが苦手でパニックになります。



集団活動の場では集中が続きません。
など、家庭や園での様子を明確に説明することで、より実態に即した判断につながります。
もし「家庭での困りごとと判定結果の差が大きい」と感じる場合は、教育委員会や学校に再相談することも可能です。
就学相談の判定結果が希望と違った場合はどうする?
では、就学相談の結果が希望していたものと違う場合、どうすればいいのでしょうか?
勘違いされている方も多いですが、実は就学先の決定権は保護者にあります。
そのため、保護者の判断で判定結果と違う就学先に決定することも可能です。
就学相談の判定結果が出てからの選択肢は大きく分けて3つあります。
- 判定結果を受け入れる
- 保護者の希望で決定する
- 通級指導を利用する
①判定結果を受け入れる
就学相談の結果が希望と異なる場合、選択肢の一つは「判定結果を受け入れる」ことです。
これは、教育委員会や発達検査を担当した心理士の意見を尊重し、子どもにとって最も適した学びの環境を優先する考え方です。
就学相談の判定は、発達検査、観察、保護者の面談をもとに、複数の専門職が協議して行います。
そのため、個人的な印象や一面的な評価に偏らず、客観的なデータと教育現場での実践的な視点を合わせて判断されています。
判定結果を受け入れるメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 教育現場と家庭の認識が一致しやすく、支援体制をスムーズに整えられる
- 専門家のサポートを受けやすく、教育相談や福祉支援と連携しやすい
- 子どもの負担を減らし、安心できる環境でスタートできる
在学中に希望級に移行することも可能
自治体によっては入学後に改めて見直しの機会を設けているところもあります。
なので、「まずは判定を受け入れた上で、半年後に再相談」という形も可能です。
柔軟に対応できることを知っておくと、「この選択で一生が決まるかも…」という過度な不安を和らげられますよ。



あくまで「スタート地点の判断」であり、子どもの現時点での最適解を選ぶという前向きな判断だよ!
基本的には、どの学校でも就学後に担任や支援コーディネーターと連携しながら成長に合わせて環境を調整していくことができます。
②保護者の希望で決定する
就学相談の結果は、あくまで「教育委員会による助言・判定」であり、最終的な就学先の決定権は保護者にあります。
そのため、判定結果に納得できない場合や、家庭の方針に基づいて別の選択をしたい場合は、保護者の希望で進学先を決定することも可能です。



支援級判定だったけれど、まずは普通級で様子を見たい



普通級判定だったけど、家では支援が必要と感じているので支援級を希望したい!
希望を優先すること自体は悪いことではありません。
家庭での実態を一番よく知るのは保護者であり、子どもの特性や性格を踏まえた上で最も適した環境を選べるのも親の大きな役割です。
ただし、「希望=現実的に機能する支援環境になるように準備すること」が欠かせません。
保護者の希望で決定する際には、次のような点を理解しておくことが大切です。
- 支援体制の違いを把握する
- 入学後のサポートを見通す
- 学校との連携を密にする
①支援体制の違いを把握する
支援級と普通級では、支援員の配置・個別の指導時間など、サポート体制に差があります。
希望で進学する場合、学校がどこまで対応できるかを事前に確認する必要があります。
②入学後のサポートを見通す
希望を優先して普通級を選んだとしても、子どもの負担が大きくなれば途中で支援級や通級に切り替えることも可能です。
一方で、支援級を選んだ場合も、成長に応じて普通級への移行が検討されます。
つまり、どちらを選んでも固定ではなく「経過を見ながら調整できる」という考え方が重要です。
③学校との連携を密にする
希望で決定する場合、学校側と「どのような支援が必要か」を共有しておくことが不可欠です。
担任・特別支援コーディネーター・カウンセラーと連携し、配慮事項(座席・課題量・支援員の有無など)を文書化しておくと安心です。



ただし、子どもの負担が大きい場合は無理をさせすぎないことも大切だよ!
③通級指導を利用する
希望と判定が一致しなかった場合の中間的な選択肢として「通級指導教室(通級)」の利用があります。
通級は、通常学級に在籍しながら、週に数時間、個別に支援を受ける仕組みです。
近年では、グレーゾーンの子どもが増える中で通級の重要性が高まっています。
通級では、主に次のような支援が行われます。
- 注意力・集中力を高めるトレーニング
- コミュニケーションや社会性の練習
- 学習の苦手を補う個別指導(読み書き・計算など)
- 感情コントロールやストレス対処法のサポート
利用の対象となるのは、「発達障害」「情緒の発達に課題がある」「言語や学習に困難がある」など、特定の条件に該当する児童です。



普通級と支援級の中間の支援スタイルって感じだね。
ただし、通級は全ての学校にあるわけではなく、設置校に通う必要がある点に注意が必要です。
また、通級時間中は通常の授業を抜けて個別指導を受けるため、欠けた授業内容を家庭でフォローする工夫も求められます。
それでも、通級は「子どもの成長に合わせて支援を調整できる柔軟な仕組み」として、非常に有効な選択肢です。
判定結果と希望の間で悩む場合には、まず通級の見学や学校側に相談してみるとよいでしょう。
就学相談の判定基準ってどんなもの?
就学相談における「判定」は、単に学力の高さや発達の遅れを線引きするものではありません。
「子どもの特性」と「受け入れ環境」の両面から決定されるのが特徴です。
そのため、同じような発達特性を持つ子どもでも、自治体や学校によって判定結果が異なることがあります。
支援級か普通級かという結果だけに注目してしまいがちですが、その根拠となる「判定基準」を理解することで、より冷静に受け止めることができます。
保護者として大切なのは、数値やラベルに一喜一憂せず、判定の背景を丁寧に確認することです。
就学相談の判定基準
就学相談の判定は、主に次のような複数の視点から行われます。
- 発達の全体的なバランス
- 学習への適応力
- 集団行動・社会性の発達
- 支援の必要性と学校の体制
①発達の全体的なバランス
知的発達、言語理解、注意力、社会性、運動面など、子どもの発達を総合的に評価します。
発達検査(WISC、田中ビネーなど)の数値だけでなく、行動観察や園・家庭での様子も重視されます。
②学習への適応力
小学校の授業内容を理解・遂行する力がどの程度あるか、学習の基礎的な力(集中・記憶・理解)を確認します。
ここで重要なのは「今の力でどの程度の支援があれば集団で学べるか」という点です。
判定は、単に「できる・できない」ではなく「支援があれば可能かどうか」の観点で決められます。
③集団行動・社会性の発達
友達との関わり方、集団でのルール理解、情緒の安定なども重要な判断材料です。
特に学校生活では、学習よりも「集団行動での適応」が支援級か普通級かを分けるポイントになることが多いです。
④支援の必要性と学校の体制
同じ特性を持つ子どもでも、学校の支援体制によって対応可能な範囲が異なります。
たとえば、通常学級に支援員が配置されている学校では、普通級でも十分に対応できる場合があります。
逆に支援リソースが限られている地域では、より手厚い支援が受けられる支援級をすすめられることもあります。
就学相談で後悔しないための視点
「支援級か普通級か」という二択にとらわれるのではなく、「子どもが安心して自分らしく学べる環境を見つけること」こそが就学相談の本来の目的です。
つまり、就学相談で一番重要なのは、「子どもの最善の利益」を守ることです。
保護者の希望や社会的なイメージよりも「子どもが笑顔で学校生活を送れるか」を基準に判断することが本来の就学相談の意義です。
そのためにも、保護者自身が冷静に情報を整理し、専門家と協力して最善の選択を重ねていく姿勢が大切です。
就学相談で後悔しないためには、次の3つの視点を持つことが重要です。
- 判定の理由を正確に理解すること
- 子どもの現状と将来像を分けて考えること
- 学校・家庭・支援機関と連携すること
①判定の理由を正確に理解すること
「なぜこの判定になったのか」を質問し、支援内容や学校の支援体制を具体的に確認しましょう。
多くの自治体では、発達検査と教育委員会の協議後に結果説明の面談を設けており、そこで疑問を整理することができます。
②子どもの現状と将来像を分けて考えること
今の判定は現時点での最適解であり、成長とともに環境は変えられます。
「今に合った環境を選ぶ」ことが、将来の可能性を広げる第一歩です。
③学校・家庭・支援機関と連携すること
就学相談は一度きりではなく、継続的な対話のきっかけです。
入学後も支援コーディネーターや担任と連携し、子どもの状況に合わせてサポートを調整していきましょう。



子どもがストレスなく楽しく学校に通える選択を!
まとめ:就学相談は子どもが安心して学べる環境を選ぶ機会!
就学相談は、子どもの発達特性に応じて最適な学びの場を提案するための重要なプロセスです。
しかし、実際には「就学相談に行かなきゃ良かった」といった声も少なくありません。



ショックを受けるのは子どもを思う気持ちが強いからこそ!
だからこそ、冷静に「就学相談の目的」と「子どもに合った環境」を見極めることが大切です。
- 就学相談とは、子どもが安心して学べる環境を選ぶこと
- どの選択肢にもやり直しがあること
就学先を判定結果で選ぶのも保護者の希望で選ぶのも、どちらもゴールではなくスタートです。
保護者の中には、「支援級に入ると周囲にどう思われるか」「将来の進路に影響が出るのでは」と心配する方もいます。
しかし、就学後の様子を見て子供により適した学級に変更することは可能です。
さらに、近年ではインクルーシブ教育の考え方が広がり、支援級の児童も地域の行事や学校活動に積極的に参加しています。
学びの形が多様化している今、特に「支援級=特別」ではなく、「個に応じた教育の一形態」と捉えることが重要です。



「子どもが笑顔で通える環境」を選ぶことがいちばんの正解!
保護者が納得して就学先を選択できるよう、就学相談を上手く活用されることをおすすめします。


コメント